「売った方がいいのか、貸した方がいいのか」——住み替えや転勤、相続など、マンションを手放すタイミングで必ず出てくる問いです。「貸した方が家賃収入が入って得では?」と思う方も多いですが、それは状況によります。このコラムでは、判断に必要な3つの数字の整理から、売却・賃貸それぞれが向く状況、見落としがちなリスクまでを整理します。答えを断定するのではなく、読者自身が判断できる材料を提供することを目的としています。
01. 損得だけで決めるのは危険——判断軸は3つある
売却か賃貸かは「どちらが得か」だけでは決められません。以下の3つの軸を整理してから判断することをおすすめします。
| 判断軸 | 確認すべき内容 |
|---|---|
| 将来の居住予定 | 数年後にその物件に戻る可能性があるか。転勤・海外赴任・介護など |
| 財務状況 | 住宅ローン残債と売却査定額のバランス。毎月の収支 |
| 管理の手間 | 遠方に住む場合や複数物件を持つ場合、賃貸管理のコストをどう見るか |
02. まず確認したい3つの数字
この3つがないと、売却・賃貸のどちらが現実的かを判断できません。
① 住宅ローン残債
売却時に
完済できるか
② 売却査定額
残債との
差額はいくらか
③ 想定賃料
毎月の収支は
プラスになるか
3つの数字を使った簡易判断フロー
売却を軸に検討。手元に残る金額を計算する。
賃貸を軸に検討。空室・修繕リスクも加味する。
まず売却査定と賃料査定の両方を取る。比べてから判断する。
03. こんな人は売却向き
もう戻る予定がない
転居先で新生活を始めており、元の物件に戻る可能性がない場合。保有し続けることにメリットがなく、売却して資金を次に活かす方が合理的なケースが多い。
住み替え資金にしたい
次の物件購入の頭金に充てたい場合。賃貸収入を待ちながら資金を積み立てるより、売却してまとまった資金を手にする方がスムーズに動ける。
ローン残債が多く収支が合わない
賃料収入よりローン返済額が上回る場合、毎月赤字を抱えながら賃貸に出すことになる。売却してローンを完済した方が財務的に安定するケースが多い。
管理の手間を避けたい
遠方に転居する場合や、仕事・育児で時間的余裕がない場合。賃貸管理には入居者対応・設備故障・更新手続きなど想定外の手間が発生する。
04. こんな人は賃貸向き
数年後に戻る可能性がある
転勤・海外赴任・親の介護など、期間が限られている場合。定期借家契約を使えば、一定期間後に確実に物件を取り戻せる。
ローン完済済みで収支がプラスになる
ローンがなければ賃料収入がほぼそのまま収益になる。管理コストを引いても安定した収入源になる可能性が高い。
希少性の高いエリア・物件を持っている
広尾・白金・松濤など、供給が少なく賃料水準が高いエリアの物件は、賃貸に出すことで高い収益性が見込める。また資産価値が下がりにくいため、長期保有にも向く。
05. 見落としがちな賃貸のリスク
賃貸を検討するとき、多くの方が「家賃収入」だけを見ます。しかし実際のコストはそれだけではありません。
| リスク・コスト | 内容 |
|---|---|
| 空室リスク | 入居者がいない間は収入ゼロ。ローンや管理費は払い続ける。都心でも1〜2ヶ月の空室は珍しくない。 |
| 設備故障・修繕 | 給湯器・エアコン・水回りなどの修繕費は基本的に貸主負担。突発的な出費が発生する。 |
| 管理会社費用 | 賃料の5〜10%程度。遠方の場合は必須だが、コストとして必ず計算に入れる。 |
| 原状回復費用 | 退去時のクリーニング・修繕費。入居期間が長いほど費用が増える傾向がある。 |
| 住宅ローン控除の喪失 | 居住用でなくなると住宅ローン控除が使えなくなる。税負担が増えるケースがある。 |
06. 売却査定1億円・想定賃料30万円ならどう考えるか
具体的な数字で考えてみましょう。
| 項目 | 売却 | 賃貸(10年間) |
|---|---|---|
| 手取り収入 | 約1億円(諸費用除く) | 約2,500万円(実質手取り試算) |
| 資産保有 | 売却で手放す | 10年後も物件を保有 |
| リスク | 売れない・価格交渉 | 空室・修繕・管理の手間 |
| 将来の選択肢 | 資金を次に活かせる | 10年後に売却or継続 |
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よくある質問(FAQ)
Q. マンションは売却と賃貸、どちらが得ですか?
A. 一概には言えません。住宅ローン残債・売却査定額・想定賃料の3つの数字と、将来その物件に戻る可能性があるかどうかで判断が変わります。
Q. 住宅ローンが残っている場合、賃貸に出せますか?
A. 居住用ローンのまま賃貸に出すことは原則NGです。転勤などやむを得ない事情がある場合でも、必ず事前に金融機関へ相談・承認を取ってから動いてください。
Q. 転勤で数年間だけ貸したい場合はどうすればいいですか?
A. 定期借家契約を使うと、契約期間満了後に確実に物件を取り戻せます。通常の普通借家契約では、入居者の退去を強制できないケースがあるため注意が必要です。
Q. 賃貸に出すと住宅ローン控除はどうなりますか?
A. 居住用でなくなった年以降、住宅ローン控除は使えなくなります。税負担が増えるケースがあるため、賃貸開始前に税理士や担当者に確認することをおすすめします。
Q. まず何から始めればいいですか?
A. 売却査定と賃料査定の両方を取ることをおすすめします。2つの数字が揃って初めて、どちらが現実的かを判断できます。査定だけのご相談も歓迎しています。